退職・解雇

1.労働契約の終了

1)当事者の意思表示によるもの合意解約:労使双方の合意による労働契約の解約であって、例えば、労働者の解約の申込後、使用者による承諾の意思表示がなされるまでの間であれば、撤回が許される。したがって、使用者による承諾の意思表示がなされる前に、労働者が合意解約の申込を撤回すれば、退職の効果は発生しない。辞職:労働者が一方的に行う労働契約を解約する旨の意思表示である。合意解約と異なり、辞職の意思表示が使用者に到達した以上、労働者は、もはや撤回することはできない。したがって、辞職の意思表示をなしてから2週間を経過した時点で退職の効果が発生する。①と②を総称して「退職」と呼ばれることが多い。もちろん、実務上、合意解約と辞職とを区別することは困難である。解雇:使用者が一方的に行う労働契約を解約する旨の意思表示である。解雇は「懲戒解雇」と「普通解雇」に分かれる。労働者の企業秩序違反に対して、その制裁としてなされるのが「懲戒解雇」であり、その他の解雇はすべて「普通解雇」である。したがって、いわゆる「整理解雇」と呼ばれるものは、普通解雇の一種に分類される。

2)当事者の意志によらないもの(自然退職)
①契約期間の満了(何回も反復更新している場合を除く)
②定年(労働契約の自動終了による場合をいい、定年解雇制は除く)
③休職期間満了(行方不明期間経過)による自動退職
④死亡

2.解雇

1)解雇事由を明示
解雇する場合は、就業規則と労働契約書(労働条件通知書)に、どんな場合に解雇されるか(解雇事由)をあらかじめ明示してあること、またその要件に合致することが必要

2)解雇権の濫用は無効
労基法18条の2項では「解雇は、客観的合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」ことを規定している。

3)解雇の法令上の制限
以下の場合は法律により解雇が禁止されている

①業務上傷病により休業する期間及びその後30日間の解雇(労基法19条)
②産前産後の休業期間及びその後30日間の解雇(労基法19条)
③国籍、信条、社会的身分を理由とする解雇(労基法3条)
④労働者が労働基準監督署に申告したことを理由とする解雇(労基法104条2項)
⑤労働組合の組合員であること、労働組合の正当な行為をしたこと等を理由とする解雇(労働組合法7条)
⑥女性であること、あるいは女性が婚姻、妊娠、出産したこと、産前産後の休業をしたことを理由とする解雇(男女雇用機会均等法9条)
⑦育児休業の申出をしたこと又は育児休業をしたことを理由とする解雇(育介法10条)
⑧介護休業の申出をしたこと又は介護休業をしたことを理由とする解雇(育介法16条)
⑨労働者が都道府県労働局長に対して個別労働関係紛争の解決援助を求めたことを理由とする解雇(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律4条)
⑩公益通報をしたことを理由とする解雇(公益通報者保護法3条)
⑪裁判員となったり、裁判員の職務をするために休暇を取ったこと等を理由とする解雇(裁判員法100条)

4)解雇の予告
使用者は、労働者を解雇しようとする場合には、次のいずれかの方法によって解雇の予告をしなければならない。
少なくとも30日前の予告30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)の支払い①と②の併用例)15日前の予告+15日分以上の平均賃金(解雇予告手当)の支払い

3.退職時等の証明

労働者が退職した場合で、使用期間などの項目について証明書を請求したときは、使用者は遅滞なく交付しなければならない。労働者が解雇の予告をされた日から退職の日までの間に解雇の理由について証明書を請求したときは、使用者は遅滞なく交付しなければならない。また、退職証明書、解雇理由証明書については労働者の請求しない事項を記入してはならない。

※横スクロールでご覧ください。

退職証明書解雇理由証明書内容
請求退職時
(請求権の時効は退職時から2年まで)
解雇の予告がされた日
~退職の日までの間
証明内容次のうち労働者が請求した事項
①使用期間
②業務の種類
③その事業における地位
④賃金
⑤退職の理由
(解雇の場合はその理由を含む)
解雇の理由
交付期限遅滞なく遅滞なく

対応地域

東京都23区(世田谷、渋谷、新宿、目黒、港、品川、千代田、中央、文京、台東、墨田、江東、大田、中野、杉並、豊島、北、荒川、板橋、練馬、足立、葛飾、江戸川)
東京都23区以外
神奈川県、埼玉県、千葉県