いじめ・嫌がらせ

全国にある労働局の「個別労働紛争解決制度」に寄せられた2018年度の相談で、パワーハラスメントを含む「いじめ・嫌がらせ」の相談件数が前年度比14.9%増の8万2797件となり、過去最多を更新した。

現在、組織内でのハラスメントは深刻な問題となっており、その対応が急務となってきている。

1.ハラスメントの種類と内容

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定義具体的言動
セクシャル
ハラスメント
「職場」において行われる「労働者」の意に反する「性的な言動」により、労働者が労働条件について不利益を受けたり、就業環境が害されることをいう。・性的な事実関係を尋ねる
・性的な内容の情報(うわさ)を流す
・性的な冗談やからかい、食事やデートへの執拗な誘い
・性的な関係を強要する
・必要なく身体に触れる
・わいせつ図画を配布・掲示する
・強制わいせつ行為、強姦など
妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント職場において行われる上司・同僚からの言動(妊娠・出産したこと、育児休業、介護休業等の利用に関する言動)により、妊娠・出産した「女性労働者」や育児休業・介護休業等を申出・取得した「男女労働者」の就業環境が害されることをいう。これらは、マタニティハラスメント(マタハラ)、パタニティハラスメント(パタハラ)、ケアハラスメント(ケアハラ)と言われることもある。・解雇その他不利益な取扱いを示唆する発言
・制度等の利用の請求等又は制度等の利用を阻害する発言
・制度等を利用したことにより嫌がらせをする
・妊娠等したことにより嫌がらせ等をする
パワー
ハラスメント
同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えられたり、職場環境を悪化させられる行為をいう。・胸ぐらをつかまれ、説教をされた
・同僚の前で、上司から無能扱いする攻撃を受けた
・先輩・上司に挨拶しても無視された
・1人ではできない多大な量の仕事を押し付けられる
・他の部署に異動させられ、仕事を何も与えられない
・休みの理由を根掘り葉掘りしつこく聞かれる

2.セクシャルハラスメント

男女雇用機会均等法第11条では、職場におけるセクシュアルハラスメントについて、事業主に防 止措置を講じることを義務付けている。労働者個人の問題として片付けるのではなく、雇用管理上 の問題と捉え、適切な対応をとることが必要である。

男女雇用機会均等法第11条(抄)

事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労 働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害 されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備 その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

3.妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント

男女雇用機会均等法第11条の2及び育児・介護休業法第25条では、職場における妊娠・出産・育 児休業等に関するハラスメントについて、事業主に防止措置を講じることを義務付けている。労働 者個人の問題として片付けるのではなく、雇用管理上の問題と捉え、適切な対応をとることが必要である。

男女雇用機会均等法第11条の2(抄)

事業主は、職場において行われるその雇用する女性労働者に対する当該女性労働者が妊娠した こと、出産したこと、妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものに関する言 動により当該女性労働者の就業環境が害されることのないよう、当該女性労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

育児・介護休業法第25条

事業主は、職場において行われるその雇用する労働者に対する育児休業、介護休業その他の子の養育又は家族の介護に関する厚生労働省令で定める制度又は措置の利用に関する言動により当 該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

4.パワーハラスメント

2019年5月に労働施策総合推進法が改正され、事業主は職場におけるパワーハラスメントに起因する問題に適切に対応するために必要な体制の整備その他雇用管理上必要な措置を講じなければならないとする規定が新設された。

労働施策総合推進法30条の2

事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

5.セクシュアルハラスメント及び妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント防止対策

1.事業主の方針の明確化及びその周知・啓発

(1)①職場におけるセクシュアルハラスメントの内容・セクシュアルハラスメントがあってはならない旨の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
②妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントの内容、妊娠・出産等に関する否定的な言動が職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントの発生の原因や背景になり得ること、ハラスメントがあってはならない旨の方針、制度等が利用できることを明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。

(2)セクシュアルハラスメントの行為者、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントに係る言動を行った者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。

2.相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

(3)相談窓口をあらかじめ定めること。

(4)相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。また、広く相談に対応すること。

3.職場におけるハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応

(5)事実関係を迅速かつ正確に確認すること。

(6)事実確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮の措置を適正に行うこと。

(7)事実確認ができた場合には、行為者に対する措置を適正に行うこと。

(8)再発防止に向けた措置を講ずること。(事実が確認できなかった場合も同様)

4.職場における妊娠・出産・育児休業に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置(※妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントについてのみ規定)

(9)業務体制の整備など、事業主や妊娠した労働者その他の労働者の実情に応じ、必要な措置を講じること。

5.1から4までの措置と併せて講ずべき措置

(10)相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること。

(11)相談したこと、事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。

対応地域

東京都23区(世田谷、渋谷、新宿、目黒、港、品川、千代田、中央、文京、台東、墨田、江東、大田、中野、杉並、豊島、北、荒川、板橋、練馬、足立、葛飾、江戸川)
東京都23区以外
神奈川県、埼玉県、千葉県