過重労働による健康障害

長時間残業などの過重労働が原因で発症した脳・心臓疾患は業務との因果関係が認められて労災補償の対象になる場合があります。使用者には、労働契約に付随して、労働者の安全・健康に配慮する義務(安全配慮義務)が課せられています。労災事故を防止するための措置を講じていない場合には、安全配慮義務違反として民事上損害賠償責任を問われるケースもあります。
過重労働による健康障害の防止のためには、時間外・休日労働時間の削減、年次有給休暇の取得促進等のほか、事業場における健康管理体制の整備、健康診断の実施等の労働者の健康管理に係る措置の徹底が重要です。また、やむを得ず長時間にわたる時間外・休日労働を行わせた労働者に対しては、医師による面接指導等を実施し、適切な事後措置を講じることが必要です。

安全配慮義務

安全配慮義務とは、「ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間において、その法律関係の付随業務として当事者の一方または双方が相手方に対して信義則上負う義務として一般的に認められる」もので、判例法理によって形成されてきました。労働契約法5条で「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」と明文化されています。ただ、安全配慮義務の具体的な内容については、どのような措置を講じれば義務を果たしたことになるかといった法律上の規定はなく、個別事案ごとに判断されることになります。

過重労働による過労死

脳・心臓疾患は、基礎疾患が日常生活上の様々な要因と影響しあって発症するためその業務上認定が困難ですが、業務と脳・心臓疾患との間に相当因果関係がある(業務が脳・心臓疾患の相対的に有力な原因となっている)と認められれば、業務上の疾病として労災保険給付の対象になります。
平成13年に出された行政実務の認定基準では、長期間の過重業務による疲労の蓄積が脳・心臓疾患の発症に影響を及ぼす業務上の過重負荷として考慮されるようになり、その具体的な目安も下記のように示されています。

過労死発生のリスクを示す時間外・休日労働時間の目安

時間外・休日労働 月100所間を超える 発症前2〜6ヵ月間に1月あたり80時間を超える 発症前1〜6ヵ月間に1月あたり45時間を超える発症前1〜6ヵ月間に 発症との関連性 強い 時間外・休日労働が長くなればなるほど強い 弱い
1月あたり45時間以下

過重労働防止対策

 過重労働による過労死をはじめとする様々な健康障害を未然に防ぐため、厚生労働省では、「過重労働による健康障害防止のための総合対策」を策定しています。その概要については以下通りです。

1. 時間外・休日労働時間の削減
時間外労働そのものの削減を目指すことが、長時間労働者の健康を確保する上で極めて重要です。時間外労働は、本来臨時的な場合に行われるものであり、事業者は36協定(労基法第36条に基づく協定)の内容を限度基準(労働時間延長の限度を定めた基準) に適合したものとする必要があります。

2. 年次有給休暇の取得促進
有給休暇を取得することは心身の疲労回復、過重労働による健康障害を防ぐことにつながります。また、日常的に有給休暇を取得して心身の健康保持増進活動を行うことにより、脳・心臓疾患の発症リスクを下げることになります。

3. 労働時間等の設定の改善
労働者の個別の事情に応じ、所定労働時間の削減、長時間労働者への特別休暇の付与など労働時間・休日・休暇の設定の改善が求められます。

4. 健康管理体制の整備
労働者の健康管理のため、事業場において選任した産業医、衛生管理者、衛生推進者等に健康管理に関する職務を適切に行わせます。 産業医を選任する義務のない事業場(常時50人未満の労働者を使用する事業場)では、地域産業保健センターの産業保健サービスを活用します。

5. 健康診断の実施等
事業場で行われている定期健康診断には、過重労働による健康障害防止にも関係する項目が含まれています。前回の健康診断結果と労働時間の記録を医師に事前に伝えて、必要と認められる労働者には項目を省略しないようにすることも重要です。これは深夜業に常時従事する労働者に対する特定業務健康診断の項目省略に関しても同様です。

6. 長時間労働者に対する医師の面接指導の実施
脳・心臓疾患の発症が長時間労働との関連性が強いとする医学的知見を踏まえ、脳・心臓疾患の発症を予防するため、長時間にわたる労働により疲労の蓄積した労働者に対し、事業者は医師による面接指導を行わなければならないこととされています。また、この面接指導の対象とならない労働者についても、脳・心臓疾患発症の予防的観点から、面接指導または面接指導に準じた必要な措置を講ずるように努めます。

面接指導の実施に係る流れ

時間外・休日労働時間1月あたり100時間超 時間外・休日労働時間1月あたり80時間超 事業場で定めた基準に該当 労働者からの申出 医師による面接指導等の実施 医師からの意見聴取 面接指導の結果の記録を作成 事後措置の実施 事後措置の実施 努力義務


佐々木社会保険労務士事務所 更新情報
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