割増賃金・不払残業−2

管理職と割増賃金

管理職(管理監督者)の地位にある従業員に対しては時間外・休日割増賃金を支払う必要はありません。(ただし、深夜割増賃金に関する規定は適用されます)
しかし、ここでいう管理職とは「労働条件の決定その他の労務管理について経営者と一体的な立場にある者」とされており、「部長」や「営業所長」といった肩書ではなく、実態により判断されます。
例えば、「地位に適した相応の賃金が支払われている」といった待遇、「部下の採用、給与の決定など人事管理の権限を持つ」、「出勤時間が本人の裁量に任されている」といった立場にあることが必要です。営業上の理由で全員に課長という肩書が与えられている部署があったとしても、その従業員が上記のような立場になければ管理職とはいえません。

◇管理職の判断基準

  1. 職務内容と責任権限は管理職にふさわしいか
  2. 勤務態様の実態が労働時間等の規制になじまない場合に限定しているか
  3. 定期給与、賞与などで一般社員より優遇されているか
  4. スタッフ職の場合、経営上の重要事項に関する企画立案業務を担当しているか

不払残業に陥りやすい例

1. 定額残業手当
残業手当を定額で支払うこと自体が必ずしも違法というわけではありませんが、実際の残業時間が定額残業手当に相当する時間を超えた場合には、その超えた時間分の割増賃金を別途支払う必要があります。また、割増賃金額以上の支払いがなされているかを判断できるように基本給のうち通常の労働時間の賃金にあたる部分と時間外、休日および深夜の割増賃金にあたる部分とを区別できるようになっていることが必要です。

2. 年俸制なので残業代支払いは不要
年俸制は本来成果主義を具体化する方法の賃金制度ですが、賃金コスト削減の一手法として導入している企業も存在しています。年俸制は割増賃金の適用除外ではなく原則として、年俸とは別に労働時間の長さに応じた割増賃金を支払う必要があります。
ただし、年俸に時間外労働等の割増賃金が含まれていることが労働契約の内容で明らかで、通常の労働時間の賃金にあたる部分と時間外、休日および深夜の割増賃金にあたる部分とを区別できるようになっており、かつ、実際の残業が契約で決められた時間内であれば割増賃金の支払いは不要と考えられます。

3. 歩合給制なので残業代支払いは不要
歩合給制とは出来高払制、請負給制ともいい、売上に対して何%、契約成立に対して何円といった一定の成果に対して定められた金額を支払う賃金制度のことです。歩合給制であっても法定労働時間を超えて労働した場合は、その部分について割増賃金が必要です。歩合給制の場合は、歩合給の額を総労働時間で割って1時間当たりの賃金を計算します。歩合給に割増賃金が含まれるといえるには、通常の労働時間の賃金にあたる部分と時間外、休日および深夜の割増賃金にあたる部分とを区別できるようになっていることが必要です。

労働時間の把握

割増賃金の不払いや過重な長時間労働等の問題が生じている事を踏まえ、厚生労働省は労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準を定め公表しています。

1. 始業・終業時刻の確認・記録
使用者は、労働時間を適正に管理するため、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録すること。

2. .始業・終業時刻の確認・記録の原則的な方法
原則として、次のいずれかの方法によること
ア)使用者が、自ら現認することにより確認し、記録すること。
イ)タイムカード、ICカード等の客観的な記録を基礎として確認し、記録すること。

3. 自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合の措置
自己申告制により行わざるを得ない場合、以下の措置を講ずること。
ア)自己申告制を導入する前に、その対象となる労働者に対して、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと。
イ)自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施すること。
ウ)労働者の労働時間の適正な申告を阻害する目的で時間外労働時間数の上限を設定するなどの措置を講じないこと。 また、時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないかについて確認するとともに、当該要因となっている場合においては、改善のための措置を講ずること。

4. 労働時間の記録に関する書類の保存
労働時間の記録に関する書類について、労働基準法第109条に基づき、3年間保存すること。

5. 労働時間を管理する者の職務
事業場において労務管理を行う部署の責任者は、当該事業場内における労働時間の適正な把握等労働時間管理の適正化に関する事項を管理し、労働時間管理上の問題点の把握及びその解消を図ること。

6. 労働時間短縮推進委員会等の活用
事業場の労働時間管理の状況を踏まえ、必要に応じ労働時間短縮推進委員会等の労使協議組織を活用し、労働時間管理の現状を把握の上、労働時間管理上の問題点及びその解消策等の検討を行うこと。

不払残業の解消

先にあげた所定労働時間外に発生する賃金または割増賃金を支払うことなく労働を行わせる不払残業は労働基準法に違反します。
厚生労働省は「賃金不払残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針」で賃金不払残業の解消策として、以下のようなものをあげています。

  1. 労働時間適正把握基準の遵守
  2. 職場風土の改革
  3. 適正に労働時間の管理を行うためのシステムの整備
  4. 労働時間を適正に把握するための責任体制の明確化とチェック体制の整備

佐々木社会保険労務士事務所 更新情報
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